〈古文〉助動詞「す」「さす」「しむ」の解説 〜使役と尊敬の識別〜

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 今回は、古文助動詞「す」「さす」「しむ」について解説します。使役と尊敬の識別や、「す」「さす」「しむ」の使い分けについてわかりやすく解説します。

助動詞「す」「さす」「しむ」

 助動詞「す」「さす」「しむ」は、全て使役を中心とする助動詞です。現代語で言うなら、「せる」「させる」にあたる助動詞です。

活用

 まずは、活用から見ていきましょう。

「す」の活用〜

せ・せ・す・する・すれ・せよ

「さす」の活用〜

させ・させ・さす・さする・さすれ・させよ

「しむ」の活用〜

しめ・しめ・しむ・しむる・しむれ・しめよ

接続

 接続についてまとめておきましょう。

〜す・さす・しむの接続〜

四段・ラ変・ナ変の未然形

さす上記以外の未然形

しむ未然形

 とりあえずゴリゴリ覚えましょう。追加で解説していきます。「す」「さす」については、「る」「らる」に似ています。「す」は四段・ラ変・ナ変、「さす」はそれ以外の動詞系に接続します

 「しむ」については、未然形ならどんな動詞でもOKです。そうすると皆さん言い出すんですよ。「じゃあ、「しむ」だけでいいじゃん!」ってね。そんな方に一言、「だめです笑」。んー、なんでって言われると難しいですが、実は「しむ」って漢文でメインに使われるんですよ。「使」に代表される使役系を書き下す際に、「しむ」って解釈するんですね。逆に言えば、純粋な古文では「す」「さす」が主流でほとんど「しむ」は出てこないんですね。物申してきた方々、これで納得ですか〜?

意味

 さあ、使役の助動詞3つの意味ですが、とりあえず簡単にまとめておきましょう。

〜す・さす・しむの意味〜

使役「〜させる」
尊敬「〜なさる」

 まあ具体的に見ていきましょう。

使役

 3つの助動詞全て、基本の意味は使役になります。訳は「〜させる」でいいと思いますよ。

例)本を読ま(本を読ませる
  服を着させる(服を着せる

まあ、楽勝ですね。

尊敬

 ただし厄介なのがこちらの意味です。3つの使役助動詞は、実は尊敬の意味も持っています。訳す際には、「〜なさる」「お〜になる」といういつものパターンでいいです。とりあえず例文を見てみましょう。

例)泣か給ふ(泣きになる
  弾か給ふ(弾きになる

 とりあえずは、尊敬の意味があることを覚えておきましょう。

使役と尊敬の識別

 さあここまでくると「使役と尊敬はどうやって見分けるんだ!」って物申して来る方が大勢いますよね。解説したいと思います。

 まずはポイントです。

尊敬語を伴わなければ、使役

 これに尽きると思います。尊敬の場合って、「す」「さす」の助動詞のほかに「給ふ」「おはす」とか何かしらの尊敬語が後ろについています。それがついていない時は、使役と考えてしまってOKです。

 ただし厄介なのは1つ。後ろに尊敬語がついていても使役の可能性があるということです。これについては、(皆さんが嫌いなことは承知していますが)文脈で判断するしかありません。

 まあ例文を見ています。

例)人々に弾か給ふ(人々に弾かなさる)
  中宮が弾か給ふ(中宮が弾きになる

 この違いはわかりますか。2つのうち、上の例文は使役の意味、下の例文は尊敬の意味になります。「弾かせ給ふ」という全く同じ文字ですが、意味が変わってきてしまうんですね。この理由は動作主体にあります。弾くのが誰なのか、それが偉い人なら尊敬ですよ。それに対して、偉い人が偉くない人に弾かせる、つまりは使役させる人がいる場合には使役になります。この違いを見抜かなければなりません。誰がその動作を行うのかを考えて、意味を見分けていきましょう。

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