〈政経〉国際連合の仕組みと歴史 〜存在意義と問題点〜

公民

 こんにちは、今回は国際連合について深堀りしていきたいと思います。なお、世界史記事の中に国際連盟について解説したものがありますので、併せてご覧ください。公民を学習するにおいて、欠かせない知識がたくさん出てきますよ!

国際連合とは(一部、世界史分野あり)

 国際連合とは第二次世界大戦後に成立した、国際連盟に次ぐ史上二番目の国際平和機構になります。そして、当たり前ですが、国際連合は現在まで健在ですよ! 国際連合の方針については、大西洋憲章で初めて言及されて以来、モスクワ会議やヤルタ会談で具体的な話し合いが進みました。当時は、連合国側を中心に発足させています。そのため、敵国の日本やドイツは初期段階では参加していません。

 国際連合の基本になっているのは国際連合憲章です。これはダンバートン=オークス会議で原案が検討され、1945年のサンフランシスコ会議において調印されました。

国際連合の仕組み

組織

 まずは組織から一挙に見ていきましょう。

総会…全加盟国で構成

安全保障理事会…安全保障問題について話し合う

経済社会理事会…経済や文化について話し合う

信託統治理事会…信託統治地域の自立支援/活動休止中

国際司法裁判所…国家間の紛争を解決

事務局…各機関の事務処理を担当

総会

 総会は全加盟国で構成されています。ここでは一国一票の投票権が与えられ、多数決で議決されます。これは国際連盟との違いですね、あの時は全会一致でした。今回は多数決がメインになります。

 総会によって設立された専門機関も紹介しておきます。

〜総会によって設立された専門機関〜

国連人権理事会(UNHRC)
国連環境計画(UNEP)
国連大学(UNU)
国連貿易開発会議(UNCTAD)
国連児童基金(UNICEF)
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)

 上には載っていませんが、国際原子力機関(IAEA)も総会によって設立された専門機関ではありますので、こちらも覚えておいてください。

安全保障理事会

 安全保障理事会は国際連合でも特に重要な理事会になります。なぜかって? そりゃあ国際平和を維持するための国際連合ですからね、安全保障を担当する理事会は重要ですよ。

 安全保障理事会は常任理事国非常任理事国で構成されています。まず常任理事国は全て覚えてください。

〜安保理の常任理事国〜
アメリカ・イギリス・フランス・中国・ロシア

 簡単に言えば、第二次世界大戦時の連合国の主要国ですね。国連スタート時には、アメリカ・イギリス・フランス・中華民国・ソ連でした。中華民国についてはのちに中華人民共和国に、ソ連はのちにロシアに取って代わられました。

 安保理の常任理事国については特別な権限が認められています。それが拒否権ですね。一国でも拒否権を発動すれば決定がなされません。国際連合は多数決制にした反面、大国一致の原則もとっているんですね。ただしね、超緊急時に1国が拒否権を発動して止めてしまうのはまずいでしょ。そういう場合には緊急特別総会というものを開くことができます。

 非常任理事国については、任期2年で10ヵ国選ばれます。日本もたびたび選出されています。

経済社会理事会

 経済社会理事会は、教育や文化、経済、社会、福祉などに関する国際問題について研究や勧告を行う機関です。性質上、多くの専門機関がここと提携しています。

〜経済社会理事会の主な専門機関〜

世界貿易機関(WTO)
国際労働機関(ILO)
国連教育科学文化機関(UNESCO)
世界保健機関(WHO)
国連食糧農業機関(FAO)
世界知的所有権機関(WIPO)

信託統治理事会

 信託統治理事会は、住民が自立できずに信託統治を受けている地域を助ける理事会です。まあすごいざっくり言えば”植民地”を独立させる組織ですね。ただし、1994年にパラオが独立して信託統治地域がなくなったことで、活動は休止となっています。以後は必要な時に会合を開くことになっています。

事務局

 事務局は、簡単に言えば国際連合の公務員ですね。さまざまな事務処理を担当します。事務局の最高責任者は事務総長といいます。事務総長は大国や利害関係の多い国からはあまり選ばれず、中立的な国から選ばれるのが慣習となっています。2021年現在の事務総長はポルトガルのグテーレスです。

国際連合の活動と存在意義

平和維持のための活動

 国際連合は平和を維持することが目的のため、さまざまな活動を行っています。まずは万一戦争が起こった際の対応についてです。国際連合として停戦のために、経済制裁武力制裁(軍事的措置)をとることができます。国際連盟は経済制裁のみであったのに対して、国際連合では武力制裁も可能です。武力制裁のために設けられた軍隊を国際連合軍といいます。ただし現在まで正規の常備軍は設けられていません。

 また、紛争地域に派遣して事態の悪化や拡大を避けるための軍隊もいます。これは国連平和維持軍(PKF)と呼ばれるものです。そして、この軍隊による活動を国連平和維持活動(PKO)といいます。日本の自衛隊はPKOに参加することができます。おもなPKFの任務は、停戦の監視などですね。

人権問題への取り組み

 国際連合は平和を脅かす要素でもある人権問題にも取り組んでいます。1948年には世界人権宣言が採択され、1966年には国際人権規約が採択されました。さらに、人種差別撤廃条約子どもの権利条約女性差別撤廃条約なども採択しています。

国際連合の問題点

 「国際連合は現在まで続いているから完璧なのか」と思いきや、そんなに簡単でもありません。長く続いていれば問題点も出てきます。

財政問題

 国際連合は各国の分担金によって成り立っています。しかしね、経費は毎年かさんでいくんですよ。出てくるお金は限られてるわけですから、どうやって組織機能レベルの低下を避けつつお金を節約するのかということは重要な問題ですね

 ちなみに国連分担金については、アメリカ・中国・日本の順に多くなっています。

総会の多数決制による問題

 総会が多数決であることが問題になるんです。どうしてだと思いますか? 例えばですね、「先進国は発展途上国に対して毎年1億円を寄付する」っていう議案が出てきて総会で可否を問うことになったらどうなると思いますか? この議案、多分通ります。理由は分かりますね。先進国の数よりも発展途上国の数の方が多いんですよ。

 発展途上国の数が多いことで発言力が大きくなると、先進国にとっては不満ですよね。かといって先進国に強い権限を与えれば、発展途上国にとっては不満ですよね

国の扱いについて

 安全保障理事会の常任理事国を増やそうじゃないかという意見もあります。というのも、国連加盟国は発足時の4倍になっているのにも関わらず、常任理事国は固定されたままなんですね。ですので安保理を改組して、常任理事国になりたいといっている国があります。具体的には、日本・ドイツ・インドなどですね。

 また、国連憲章の旧敵国条項というものを削除したいという要望もあります。国連は遡れば連合国というまとまりからできたものなので、国連からすれば枢軸国の日本やドイツは”敵国”になります。しかし第二次世界大戦終結から80年近く経った今、さすがに削除すべき条項なのではという意見も出ています。

まとめ

 今回は国際連合についてまとめました。政治経済・現代社会・世界史・日本史などあらゆる分野で出題される可能性がありますので、みなさんぜひ押さえておきましょう。

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