〈化学〉地味によく出る コロイドの性質まとめ

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 理論化学と言えばとにかく計算というイメージですが、その中でも特殊な暗記メインの分野がコロイドですね。今回は、コロイドの問題を解くにあたって必要な知識を解説していきます。

コロイドって何?

 コロイドというのは、直径1nm~100nm程度の大きさの粒のことを言います。原子や分子よりも少し大きいですね。この大きさの粒子は、液体中や気体中で安定的に存在することから少し特殊な性質を持っています。

 コロイドの大きさ関連で一つ覚えておいてほしいことがあるのでここで紹介します。コロイドは小さな粒なので、ろ紙は通過できます。ただしセロハンは通過できません。これが重要な性質です。

 それともう一つ、コロイド粒子は溶媒の中に入れると沈殿せずに分散します。このようなコロイド溶液のことをゾルと言います。逆に、コロイド溶液が凝固したものをゲルと言います。また、ゲルを乾燥させたものをキセロゲルと言います。このあたりは共通テストの正誤問題とかで狙われるので、言葉をしっかり押さえてください。

コロイド粒子の構成

 コロイド粒子の中でも、一つの分子でできているものを分子コロイドを言います。通常であれば、分子よりもコロイド粒子の方が大きいわけですので、コロイド並みの大きさを持つ分子ってことです。具体的にはタンパク質やデンプンといった分子量が大きな分子ですね。

 逆に、小さな分子が多数集まった集合体を会合コロイドミセル)と言います。

コロイドの分類

 コロイド粒子は、ものによって水和性に差があります。それによってコロイドを大まかに2種類に分類することができます。

疎水コロイド

 まずは疎水コロイドです。「疎水」と言ってるくらいなので、水とは仲良くありません。主に無機物質のコロイドに多いです。無機物質って水とあんまり仲良くないイメージありませんか? どちらかというと有機物質の方が仲良いですよね。

 疎水コロイドの最大のポイントは、少量の電解質を加えると沈殿することです。これを凝析と言います。

親水コロイド

 次は親水コロイドです。「親水」ですから、水と仲がいいですね。主に有機物質のコロイドに多いですね。

 こちらは疎水コロイドとは異なって、多少の電解質を加えても沈殿しません。沈殿させたいときは、電解質を大量に加える必要があります。これを塩析と言います。

コロイドの性質

チンダル現象

 コロイド粒子は光を散乱させるという性質があります。そのため、コロイド溶液に光を通すと光の筋を見ることができます。光は直進(あるいは屈折)するので、普通の水溶液などに光を通しても何も起こりませんが、コロイド溶液に通すと多くの光が散乱することで、直進した一部の光の筋を見られます。これをチンダル現象と言います。

ブラウン運動

 顕微鏡でコロイド溶液を観察すると、光る点が不規則に動いているのが観察されます。これをブラウン運動と言います。これは、熱運動をしている水分子が不規則にコロイド粒子に衝突することで引き起こされます。

電気泳動

 コロイド粒子は、正や負の電荷を帯びています。当然電気を流せば、正のコロイド粒子は陰極側へ、負のコロイド粒子は陽極側へ流れます。このような現象を電気泳動と言います。

凝析

 凝析とは、疎水コロイドの水溶液に、少量の電解質水溶液を加えるとコロイドがくっついて沈殿するという性質です。疎水コロイドは、帯電していて互いに反発していますが、ここに電解質を入れることでコロイドが電荷を失い、くっついて沈殿するという仕組みですね。

塩析

 塩析とは、親水コロイドの水溶液に、多量の電解質水溶液を加えるとコロイドがくっついて沈殿するという性質です。凝析と似ているようですが、少し違いますので説明します。親水コロイドは、もともと周りに水分子がたくさん付着(要するに水和)していますので、コロイド同士がくっつくことが難しいのです。そこで、多量の電解質を加えるとコロイドに付着している水分子がそちらに奪われてしまい、コロイドの電荷も中和されるので、コロイド同士がくっつき沈殿することができます。凝析とは少し違う仕組みになっていることも知っておいてください。

 ちなみに、加熱した豆乳に、にがり(塩化マグネシウム)を加えると豆腐ができるのをご存じですか? これは豆乳という親水コロイドに対して、塩析を利用したものです。

透析

 凝析・塩析に続いて、今度は透析です。もう訳わかんないですよね。透析は、コロイドとイオンや分子がごちゃまぜになった溶液から、コロイド溶液だけきれいに取り出そうとするものです。

 思い出してください。コロイドや分子・イオンともに、ろ紙は通過するんでした。ところがセロハン(つまり半透膜)になると、分子・イオンは通過できますが、コロイドは通過できません。この性質を利用します。手順は簡単、ごちゃまぜ水溶液をセロハンで包んで水に沈めるだけ。あとはしばらくすると、勝手にコロイド溶液だけがセロハンの中に残ります。イオンや分子は外の水に出て行ってしまいます。

 ちなみにこれを利用したものに、人工透析があります。これは腎臓病の患者さんによく使わます。腎臓って血液中の老廃物を取り除いて、外に出そうとする働きがあるんですが、この機能が低下すると有害物質がいつまでも体の中に残ってしまいます。そこで、血液を半透膜のチューブに流してその周りに透析液を流すことで、血液中の有害成分が取り除かれます。

保護コロイド

 疎水コロイド水溶液に一定以上の親水コロイドを加えるとどうなるでしょう。答えは凝析しにくくなります。疎水コロイドが親水コロイドと違って、凝析が比較的簡単にできてしまうわけですが、この一番の理由は水和のしにくさですよね。そこで、親水コロイドを多量に加えて疎水コロイドをガードさせることで、水和しにくさをカバーすることができます。この時の親水コロイドを、特に保護コロイドと呼びます。

まとめ

 以上がコロイドの重要事項です。凝析・塩析がごっちゃになるので、せっかくですから覚え方を紹介しておきましょう。

析…疎水コロイド、量の電解質
(「ぎょう」と「しょう」)

析…水コロイド、多量の電解質
(「しん」と「えん」)

 若干無理矢理ですが、このように覚えてみてください。

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