〈数学〉「最適化」と「数学」の密接な関係

近年「最適化」という言葉をよく耳にします。この「最適化」は「数学」と密接にかかわりあっています。

辞書で「最適化」と調べると以下のように出てきます。
システム工学などで、特定の目的に最適の計画・システムを設計すること。(goo 辞書より引用)
つまり、特定の目的に対して最も良い計画を設計することなのです。
では、特定の目的とはどのような目的でしょうか?
例えば、あなたがおもしろい本を読みたいとします。この場合特定の目的は「おもしろい本を読むこと」です。あなたはどの本がおもしろいかを選んで買うなり借りるなりするはずです。しかしその本が最もおもしろいかどうかは分かりません。また、おもしろさの度合いも人によってまちまちです。そこで最もおもしろい本を選ぶためには「数値化」が大切になります。どの程度おもしろいかを数字で表すのです。
この本の問題は初めから数値化されていない例ですが、一方で初めから数値化されている問題もあります。例えばA地点からB地点まで最も安い方法で行くルートを考える場合などです。この場合、特定の目的とは「最も安い方法でA地点からB地点まで移動すること」です。皆さんも普段から乗換案内などを利用しますよね?まさにこの問題は「最適化問題」と言えます。このように目的を明確化したうえで、特定の数を最小にするというこの問題は数学と密接に関係しているのです。では、このままこの問題をコンピュータに解かせるとどうなるでしょうか。おそらくコンピュータの出す答えは「0円 交通手段:A地点からB地点まで徒歩」です。A地点とB地点が歩ける距離にあるならこれで問題なさそうですが、遠く離れている場合はこの答えでは困ります。
つまり、この問題は「最も安い方法でA地点からB地点まで移動すること」の中に条件があることを意味しています。おそらく以下のような条件が考えられるでしょう。
・徒歩は○○分以内
・○○時にA地点を出発して○○時までにはB地点に到着
 など
このような条件を制約条件といいます。この制約条件もまた、数値化して不等式などで表します。
このように「最適化」と「数学」は密接にかかわりあっているのです。

しかし、高校までの数学でこのような問題を解いたことがないと思う人は多いのではないのでしょうか。たしかに「最適化」や「制約条件」などという言葉は教科書には出てこないかもしれません。また、自分で式を立てたりすることもないかもしれません。ところが、高校数学でもこのような問題を扱うのです。

問題

リンゴジュースとオレンジジュースの2種類の飲み物が量り売りされている。リンゴジュースは1Lあたり100円、オレンジジュースは1Lあたり120円で販売されている。また、リンゴジュース1Lには5g、オレンジジュース1Lには4gの砂糖が含まれている。合計の料金が2000円以下でかつ砂糖の合計量を80g以下にしたい。この条件のもと、できるだけ多くの飲み物を買うとするとリンゴジュースとオレンジジュースをそれぞれ何Lずつ買うことになるか。

解答

リンゴジュースをx(L)とオレンジジュースをy(L)買うとすると、x+yの値を最大化したい。このような関数を目的関数と呼ぶ。制約条件は以下のとおりである。
料金による制約:100x+120y≦2000・・・①
砂糖による制約:5x+4y≦80    ・・・②
実はこれは領域の問題である。横軸にx、縦軸にyをとって①と②の式を図示することが大切である。また目的関数であるx+yについてはこの値をkと置く。x+y=kとした上で、kの値をできるだけ大きくすることを考えるのだ。また、問題文には書いていないがx≧0,y≧0の条件も大切である。

①の式はy≦(-5/6)x+50/3と変形できるので直線y=(-5/6)x+50/3の下側の領域である。
②の式はy≦(-5/4)x+20と変形できるので直線y=(-5/4)x+20の下側の領域である。

以上の2つの式を図示したら続いて目的関数のx+y=kについて考える。この式もy=-x+kと式変形する。この直線は傾き-1で切片がkの直線を表している。この式も図示すると、正しく図が描けていれば、直線y=(-5/6)x+50/3と直線y=(-5/4)x+20の交点を通り、傾きが-1の直線が一番kの値が大きくなることが分かる。(式的な根拠としては、傾きについて(-5/4)<-1<(-5/6)が成立していることである。)よって直線y=(-5/6)x+50/3と直線y=(-5/4)x+20の交点を求めるとx=8,y=10となる。(連立方程式を解く)よってx+y=kなので最大値はk=8+10=18となる。

よってできるだけ多くの飲み物を買うにはリンゴジュースを8L,オレンジジュースを10Lが答えとなる。


このように領域の問題として最適化問題(数理最適化問題)が高校数学でも出題されているのです。
つまり、高校の時点から最適化については学んでおり、それは数学と密接に関係していることがお分かりいただけたでしょうか。

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