はじめに
いよいよ11月に入りました.1次試験まで約2ヶ月,前期国公立2次試験まで約4ヶ月といったところでしょうか.私立を第1志望にされている方々は共通テストについてはあまり深く考えていらっしゃらないのかもしれませんが,国公立を志望していたり,国立私立問わず共通テスト利用で決めてしまいたい方々,旧帝大や医学科を志望している方々は特にですが,やはりそういった方々には1次試験の意味合いは2次試験とほぼ等しいといってもよいほど,大きいように思います.
しかしながら,昨年度から”大学入試センター試験”から”大学入学共通テスト”へと移行され,求められる能力も少なからず変化し,かつ過去問は1年分しかない,といったことを踏まえれば,対策が難しいと言わざるをえません.学生にとっての一番の対策は恐らく市販の問題集,しかも予想問題集なるものを購入しそれに取り組んでいく事でしょう.
今回は今年度の受験生向けに,市販されている共通テスト予想問題集の比較を試みました.
※本記事では,”予想問題”である事を重視しています.これは実際に試験同様に時間を測り,初見の問題を解き後に答え合わせを行えるようなもの,即ち主に試験形式に慣れるためのものを指しています.単元や大問別に仕分けられ,主に共通テストに対しての実力を上げるように作られた”対策問題”とは別物と見なしています.
注意
私個人の見解ですが,一次試験から勝負をかける受験生は,所謂予想問題集を作成会社問わず各科目一冊ずつ,パック問題は売られているもの全てをやるべきだと考えています.可能であれば予想問題集は各科目二冊ずつやってほしいと思っています.それ程までに試験の形式に慣れるということは重要なのです.というかそういうものです.コストがかかるのは日本の受験においては仕方がありません.
さて,昨年度の一次試験では結果から言えば各社不的中でした.各社少しずつ当てたような形でしたが,特定の会社のものをやっておけばよかった,というものはありませんでした.この一番の原因は,受験生・教員・講師全員が”試行調査”の類題が出るものだと考えていた,ことだと私は考えています.特に英語のリーディングやリスニング,国語の古文などを比較すれば顕著だと思います.なので恐らく予備校の模試,問題集を信頼していた受験生で失敗してしまった人は少なくないのではないでしょうか.昨年度から新形式で,その不安からZ会の予想問題集が各書店で売り切れる,といった事態も起こりましたが,はっきり言ってしまえばそれでさえ重宝したわけでは無かったと思います.
ところで,今年度の各社予想問題集を見てみると,昨年度の予想問題集と同様の問題が多く見受けられます.昨年度の的中しなかった問題が再度使われており,もっといえば今年度の共通テストに対応出来るのか甚だ疑問です.実はそれが本記事を作成した最たる理由ではありますが.今年度も昨年度とおなじ形式であろうことを考えると,その点も注意せざるをえません.購入する際はその点も確認するようにしてください.
各社比較
※”収録問題”はそれぞれ英語リーディングのものを記載
河合 共通テスト総合問題集
難易度 標準
収録問題
’20共テ模試1~3回
’20共テプレ
’19共テ高2模試
’21共テ第一日程
流用割合 5割 (すべて模試の過去問)
備考
全て模試の改題
共通テスト不対応
駿台 大学入学共通テスト実戦問題集
難易度 標準
収録問題
’19高2共テ模試
’20共テ模試
’20第3回共テ駿べネ共テ
’20駿台Atama₊共テプレ
’20駿台Atama₊高2共テ
流用割合 6割(すべて模試の過去問)
備考
全て模試の改題
共通テスト不対応
東進 共通テスト実戦問題集
難易度 やや難
収録問題
オリジナル3回
’21共テ第1.2日程
特筆すべき事項無し
流用割合 比較不可
備考
共通テスト準対応
科目対応は英語,数学,国語のみ
国語は三冊(現代文,古文,漢文)
代ゼミ 大学入学共通テスト実戦問題集
難易度 やや易
収録問題
’20共テ模試第1~3回
’20共テプレ
’19高2共テ模試
’21共テ第一日程
流用割合 約5割
備考
共通テスト不対応
リーディングとリスニングが一冊
値段が他社よりも安い
Z会 共通テスト実戦模試
難易度 難
収録問題
オリジナル5回
特筆すべき事項無し
流用割合 約4割
備考
共通テスト準対応
KADOKAWA 大学入学共通テスト予想問題集
難易度 易
収録問題
オリジナル三回
’21共テ第一日程
流用割合 2割
備考
共通テスト対応
問題数は少ないが共通テスト完全対応
最後に
今回は難易度と回数の他に,今年度の共通テストに対し本当に対策になるのか,といった意味合いも含め,”流用割合(昨年度の同様のの問題集と比べどれだけ同じ問題が採用されているか)”といった指標も用意しました.ぜひ高卒生の方々には参考にして頂きたいです.現役生の方々には先ずは昨年度の過去問を解いて頂き,その後書店で実際にご覧になられて自分に会ったものを選ばれるのが最適かと思います.
それでも,やはり自分のみで決断するというのは心許無い,という方々に向け我々の推薦できるものを下に挙げましたので,参考にしてもらえればと思います.
TMTライター推薦
Writer1
国語→センター過去問,東進,(Z会)
共通テスト移行による影響は形式の変化は無く,古文の難化のみでした.国語は演習量がものをいうので,とにかくセンターを回すべきです.回し切ってまだ不安があれば,実力は十分だと思いますので,難しめかつ共通テスト志向のZ会もしくは東進のものをお勧めします.
地理B→センター過去問,Z会
共通テスト移行による影響は,主に”問題数減少(地誌)”,”理解重視の問題の登場”だと思います.前者については,地誌が一問無くなり暗記による点数差が縮まりましたが,問題一問一問が重くなりました.センターまでは1手詰めで終わりでしたが,今回から2手詰め3手詰めであったり消去法を使う問題が増えたと思います.ただしそうといいつつも,一手詰めを繰り返す,時間内に解けるようにスピードを上げるだけですので,あまり大きくはありません.後者については注目すべきです.センターまでは例えば気候区分を暗記しておいたり,何らかの生産量のランキングを覚えておけば事足りましたが,今回からはモデルを用いて原理の理解を問うてきました.例えば,大気循環による降水のメカニズムであったり,海流や比熱による気温の年較差の発生などですが,やはりこれらはセンターでは見られませんでした.これについてはZ会が的を得ていましたのでお勧めさせて頂きます.その前に,地理は演習を積むだけ点数が上がっていきますので,基礎的な内容かつ良問の多いセンター過去問をお勧めします.
数学ⅠA→河合,東進
共通テストに移行し,傾向のみ多少変化しました.駿台から出されている問題集は,公開模試なども含めややセンター寄りに思えます.Z会は逆に”やり過ぎ”だと評価しています.残りのうちで,簡単すぎずかつ傾向を掴めているものは河合と東進だと思います.
数学ⅡB→東進,Z会
共通テストに移行し,やや発展的な内容が出題されるようになりました.数ⅠAでのような理由に加え,やや難しいものを解いておくべきだと思いますのでこういったチョイスです.
物理→Z会
共通テスト移行で,テストとしての質が下がった気がします.センター試験ほどのフォーマルさは半減したように見えます.物理の教科書を読んでおくだけで事足りると思いますが,やはり初見問題対策のために,似た形式を通して自分の持っている知識をどう変容させるか,どう解釈するかを考える訓練をしてもよいかもしれません.日常生活で知っておかないと解けない問題は,出題されませんでしたのでその点は安心できます.
化学→河合,Z会
やはり図やグラフを用いる問題が増え,点をとるのに苦労するようになりました.昨年度共通テストの点数や,各予備校の模試をみていると化学は難化するように思えます.共通テスト対応で,簡単過ぎないものはこの二社のものだと思います.
英語リーディング→東進,KADOKAWA,Z会,代ゼミ
この科目に関しては他と比べれば特別な対策が必要だと思います.個人的には,英語の力を問うている訳ではなく,英語での処理能力のみを測っているような気がしています.6社比較したうち,共通テスト英語リーディングに対応しているのは東進,KADOKAWA,Z会,代ゼミでした.もし心配でしたら,書店で各社問題の大問3を見比べてみてください.弊社予想であった感情変化の問題をそのまま使っていれば,その問題集は新傾向に対応していません.逆に出来事の時系列順の並び替えであれば対応しています.共テ英Rは数がものをいいます.正直なところ,共テの対策はどこのものを使用してもあまり変わりません.しかし英語二科目は別です.どうかこれらだけはここに記載されてあるものを使用してください.4社のうち,簡単なものをやりたければ代ゼミかKADOKAWA,本番を意識したければ東進かZ会を使用してください.一冊目は前者から,二冊目は後者から選ぶ,というのもよいと思います.
英語リスニング→KADOKAWA,Z会,(代ゼミ),(東進)
上記の通りです.代ゼミのものと東進のものは過去問を流用しているからでしょうが,第3問を見ると1回読みに対応してませんので,自分で1回読みに制限すれば他2社と同様に演出できます.KADOKAWAのものはやはり簡単で,本番を見据えればZ会しか無いようにも思えてきます.
History-teller
物理基礎→どこでもオススメ
物理基礎レベルであれば、どこの出版社の問題もほとんど変わりません。経験を積んでいき、目標点数に届くまで演習するのがいいと思います。ただし、物理基礎の問題集自体があまり売っていないので、まあ売っているものを全部やってもいいかと思います。センター過去問でも全然OKです。
化学基礎→どこでも良い(強いて言えば河合出版)
物理基礎と同様で、こちらもどこの出版社でも大差ありません。強いて言えば、河合出版の化学基礎の予想問題は、質が高いと感じました。始めるならここからやるのがオススメです。
数学ⅠA・数学ⅡB→河合
数学については、個人的には河合がオススメです。河合が終わった人は、駿台やZ会に手を出してみてください。河合が一番質が高いと思います。
国語→センター過去問
国語については、センター試験の過去問を全て解いてください。これが全てです。センター過去問をやりまくりましょう。センター過去問によって全てが決まります。「共通テストの形式とは違うのでは?」と思う人もいるでしょうが、原則として「センターできなければ共通テストもできない、センター解ければ共通テストも解ける」というものがあります。センター試験を最後まで解いてください。
その上で、Z会や河合の問題集を解いてみると良いと思います。先に解くのはセンター過去問です。
日本史→駿台,河合
日本史は駿台がオススメです。共通テストの日本史には、地図問題が出されそうなので、その対策ができるという意味では駿台が良さそうです。もちろん河合などでも良さそうでしたよ。地図問題に強くなりましょう。
世界史→駿台
世界史はまず駿台です。駿台を解いてから判断してください。世界史の共通テストは地図問題と長文読解問題が狙われます。そこを押さえる意味では駿台が適しています。
英語リーディング→Z会
リーディングについては、Z会がいいかと思います。ただし、Z会も第1回共通テストよりは試行調査に近しいものになっているため、なんとも言えません。やはり東進なども検討して見てください。使ってはいけないのは河合出版です。今年の対策には使えません。
英語リスニング→Z会
リスニングについてもZ会がオススメです。河合については昨年と問題形式を変えていないので、ほとんど意味がないと思います。
8nosu
生物→河合,駿台
河合は5回目まですべて平均点が50点以下で結構難しめでよさそう。解説もしっかりあっていい。駿台は難しめで解説も丁寧で良い。Z会は思考が多めで簡単。代ゼミは良問で解説もしっかりある。
現代社会→駿台
そもそも発行している所が駿台と代ゼミしかない。代ゼミは解説はいいもののややずれがある。
コメント