〈政治〉政党解説2025 日本維新の会

2025参議院選挙特集

2025参院選特集シリーズです。今回は日本維新の会について解説していきます。

日本維新の会とは

 日本維新の会は、日本で唯一大阪を拠点とする政党です。現在の代表は吉村洋文大阪府知事です。また、共同代表は前原誠司衆議院議員ですね。知事が代表という、珍しい性質の政党になります。

 大阪では前回の衆議院選挙でも圧倒的な強さを見せています。その歴史を今回は解説していきます!

大阪維新の会

 始まりは、2010年の大阪です。当時の大阪府知事は橋下徹でした。橋下氏の政策に対して、大阪府議会の自由民主党内部で賛成派と反対派に分裂しました。知事支持派が作ったのが、政治団体「大阪維新の会」です。全てはここから始まります。代表に就任したのは、大阪府知事の橋下徹でした。ちなみに、最初から参加していたメンバーの1人が松井一郎氏です。彼は後に、維新の代表になります。

 最初は自由民主党に所属しながら大阪維新の会に所属する議員がほとんどでしたが、2010年9月には自民党から離党勧告を受けたことで、大阪維新の会に参加したメンバー45人が自民党を離党しました。

 翌年、2011年は統一地方選挙でした。ここで大阪府議会・大阪市議会・堺市議会という、大阪の「三大主要議会」と言っても過言ではない、3つの議会で第1党の地位を得ます。大阪で大躍進したのです。

 橋下徹知事の最大の目標は「大阪都構想」でした。これは説明すると長くなるので、簡単に中身について触れておきますね。「大阪都構想」とは、大阪市を廃止し、東京都のように区長を選出できるような特別区を4〜5つ設置するという構想になります。これにより、大阪府と大阪市の二重行政を解消し、より細かな特別区が細やかなニーズに対応できる、と考えられていました。

 そんな目標を達成するため、橋下徹は大阪府知事の任期を残して、大阪市長選挙に出ました。大阪市を廃止するためには、大阪市の同意が必要です。大阪都構想のためには、自分が大阪市長になるのが手っ取り早かったのです。結果、橋下徹は大阪市長に当選し、同時に行われた大阪府知事選挙に勝ったのは大阪維新の会幹事長の松井一郎でした。これで大阪維新の会は、大阪府知事・大阪市長の首長ポストを独占することに成功しました。

(旧)日本維新の会

結党

 2012年、地域政党「大阪維新の会」を母体としつつ、「日本維新の会」が結成されました。ついに維新が国政デビューとなります。代表は橋下徹、幹事長は松井一郎となりました。2枚看板の名前はこの後も度々出てくるので、ぜひ覚えておいてください!

 この党は、選挙を経ずに成立しています。選挙抜きで国政政党になるためには国会議員5人以上が必要でしたが、この要件は余裕で満たしました。国会議員7名が合流したのです。

 さらに石原慎太郎氏率いる太陽の党がここに合流しました。その際、石原慎太郎を代表とし、橋下徹は代表代行になりました。これで国会議員は13人に増えました。

初の衆院選で大躍進

 迎えた2012年12月の衆議院議員総選挙、現有11議席からどうなったのか、結果を見てみましょう。

2012年12月総選挙(定数480名)

自由民主党 294議席
民主党 57議席
日本維新の会 54議席
公明党 10議席
みんなの党 12議席
日本未来の党 9議席
日本共産党 8議席
社会民主党 2議席
新党大地 1議席
国民新党 1議席

なんと他の政党をごぼう抜きして、第3党に躍進しました。転落してきた民主党にあと少しのところまで迫ったのです。

意外に苦戦…

 2013年に入ってすぐ、石原慎太郎と橋下徹の共同代表制に移行しました。

 2013年6月、東京都議会議員選挙が行われました。石原慎太郎は東京都知事だったわけですから、「国政」政党・日本維新の会としては、やはり東京に積極進出したいところ。衆議院選挙の勢いを生かして34人の公認候補を立てました。しかし結果は、わずか2議席にとどまりました。はっきり言って大惨敗です。

 ところが翌月の参議院選挙は、改選2議席だったところから、8議席を獲得し、議席増加には成功しました。この時点で社民党議席は抜いたものの、みんなの党や共産党には非改選議席を含めるとまだまだ及びませんでした。ただし、比例票は相当なものでした。

1度目の分裂

 橋下徹は、結いの党との合流を模索することになりました。ところで「結いの党」ってご存知ですか? これはみんなの党から派生した政党だと理解してください。みんなの党内部には、維新との合流賛成派と反対派に分裂しており、賛成派が離党して作られたのが結いの党です。代表は江田憲司という人物です。この経緯から、結いの党は当初から日本維新の会との合流を目指しました。

 しかし石原慎太郎と結いの党との相性が悪く、石原慎太郎自身が受け入れない姿勢を示しました。これで段々、維新の中で「石原派」と「橋下派」に分かれてくることになりました。

 一方その頃、大阪でも一悶着ありました。維新の悲願である、大阪都構想です。橋下徹が市長選挙に当選したのは2011年のため、市長任期は2015年まででした。そこで、橋下徹は市長を一度辞職し、大阪都構想の是非を争点に、出直し選挙に挑むことにしました。結果はこれに勝利しました。大阪の地域政党「大阪維新の会」は堅調でしたが、国政のゴタゴタは続きます。

 結論として、結いの党との合流を巡って、党が2つに割れることになりました。橋下派38名は、結いの党とくっついて維新の党を結党しました。対して石原派22名は、次世代の党を結党しました。

維新の党

新党、始動

 維新の党の結党は2014年9月でした。共同代表は橋下徹と江田憲司、幹事長に松井一郎が就任しました。

 早速、12月に衆議院議員総選挙を迎えます。

2014年12月総選挙(定数475名)

自由民主党 291議席
民主党 73議席
維新の党 41議席
公明党 35議席
日本共産党 21議席
次世代の党 2議席
社会民主党 2議席
生活の党 2議席

 維新の党は選挙前に42議席を持っていましたが、分裂・合流騒動での評判の悪化から苦戦が予想されていましたが、選挙前より1議席減で済んだため、善戦したと言えるかもしれません。

 選挙後には大阪都構想に専念するため、橋下徹代表と松井一郎幹事長はそれぞれの役職を辞任しました。以後、江田憲司が単独の代表となります。

大阪都構想1度目の挑戦

 そして2015年5月、大阪都構想の住民投票がついに行われました。結果は反対多数で否決となります。これを機に、橋下徹は政治家引退を表明しました。同時に江田憲司も党の代表を辞任し、次の代表には松野頼久が選ばれました。

2度目の分裂

 新代表の松野頼久は、民主党との合流を模索するようになりますが、これに橋下徹は反対します。このタイミングで事件を起こしたのは柿沢未途幹事長です。彼は結いの党の出身ですね。やはり民主党との連携路線の人物だとご理解ください。

 柿沢幹事長は、山形市長選挙で民主党や共産党の推薦する候補を独断で応援に出たのですが、これを問題視する声が出てきました。松井一郎は柿沢幹事長の辞任を求めるものの、松野代表はそれを阻止する方向に動きます。結果として、「松井・橋下派」vs「松野・柿沢派」に分裂してしまいます。

 橋下徹と松井一郎や、彼らに近しい議員は集団で離党し、国政政党「おおさか維新の会」を作りました。

 この分裂騒動、想像以上に大変でした。泥沼の権力闘争です。党の代表権は誰にあるのか、お金はどのような処理をするかなど、細かなところまでも争いが続き、お互いに刑事告訴・民事告訴を起こしまくってました。詳しい経緯は触れませんが、結果として「維新の党」と「おおさか維新の会」に分裂したことは理解しておいてください。また、この過程で一部議員はどちらにもつかずに、「改革結集の会」を結成しました。

 2016年2月、維新の党は民主党(代表:岡田克也)との合流に同意し、3月に民進党を結党しました。以降の歴史は立憲民主党や国民民主党の記事で見てください。

おおさか維新の会

結党

 2015年10月、維新の党から離れたメンバーで新たに「おおさか維新の会」が作られました。初代代表は橋下徹、幹事長は松井一郎でした。

 ところが橋下徹は12月の市長任期満了をもっての政界引退を表明していたため、同月に松井一郎幹事長が代表に就任しました。共同代表には片山虎之助、新たな幹事長には馬場伸幸が就任しました。また、橋下徹の後任の大阪市長には吉村洋文が当選しました。

 2016年7月の参議院選挙が、新体制初の本格的な国政選挙となり、7議席を獲得し、合計12議席となります。関西では好調だったものの、やはり全国的にはまだまだでした。そこで、8月には党名を日本維新の会に変更し、全国進出を目指すことになりました。

日本維新の会

衆院選では苦戦…

 2017年、首都東京では小池百合子の絶頂期でした。前年の東京都知事選挙で勝利した小池百合子は都民ファーストの会を設立し、都議会議員選挙でも大躍進を遂げました。勢いそのままに国政政党「希望の党」を設立し、ここに民進党も合流する方向となっていました。

 そして2017年10月の総選挙を迎えます。ここで日本維新の会と希望の党はお互いの本拠地で邪魔しないという約束を取り交わしました。希望の党が大阪で候補者を立てない代わりに、維新は東京で候補者を立てないことにしたのです。さあ、結果はどうなったか。

2017年10月総選挙(定数465名)

自由民主党 284議席
立憲民主党 55議席
希望の党 50議席
公明党 29議席
日本共産党 12議席
日本維新の会 11議席
社会民主党 2議席

 選挙前の14議席から3議席減らして11議席の獲得にとどまってしまいます。希望の党自体が選挙期間中に勢いを失い、立憲民主党が躍進したこと、総選挙に橋下徹がいなかったことなどが敗北理由として挙げられやすいですが、まあ理由はなんであれ、負けは負けです。

地域政党との協力

 2019年には統一地方選挙や参議院選挙が行われましたが、ここで他の地域政党との協力を試みました。

 統一地方選挙では、新党大地(北海道、鈴木宗男)、減税日本(愛知県、河村たかし)と選挙協力をします。大阪においては、大阪府知事の松井一郎が大阪市長選挙に、大阪市長の吉村洋文が大阪府知事選挙の立候補し、2人とも当選します。

 7月の参議院選挙でも、新党大地・減税日本に加えて、あたらしい党(東京都、音喜多駿)とも連携し、音喜多氏は東京選挙区から維新公認で初当選しています。新党大地の鈴木宗男も維新公認で全国比例から当選しました。維新が少しずつ、全国政党に脱皮してきたのです。

2度目の大阪都構想

 2020年、新型コロナウイルスが猛威を振いました。日本有数の感染率となってしまったのが、大阪府でした。そこで吉村洋文大阪府知事が連日会見を開いたことで、結果的に全国的な知名度上昇につながりました。

 同年11月には、大阪都構想の是非を問う2度目の住民投票が行われました。維新の勢いは絶好調、今なら成立するかもと皆が見守る中でしたが、結果は再び否決となりました。これで松井一郎代表兼大阪市長は、市長任期満了での政界引退を表明します。

 地域政党「大阪維新の会」の代表は松井一郎から吉村洋文大阪府知事に代わります。ただし、国政政党「日本維新の会」の代表は衆院選も近いと思われることから、当面、松井一郎が続けることになります。

衆院選で大躍進

 迎えた2021年10月総選挙、まずは結果を見てみましょう。

2021年10月総選挙(定数465名)

自由民主党 261議席
立憲民主党 96議席
日本維新の会 41議席
公明党 32議席
国民民主党 11議席
日本共産党 10議席
れいわ新選組 3議席
社会民主党 1議席

 前回の11議席から約4倍の議席を獲得します。ここでは第1党の自民党、第2党の立憲民主党の双方が議席を減らしていたため、第3極として一気に台頭しました。

 ここで松井一郎が代表を引退しようとしますが、党内で引き止められる形で、代表に留まりました。ただし共同代表が片山虎之助から馬場信幸幹事長に代わりました。後任の幹事長には、藤田文武が就任します。

参院選でも議席増、松井一郎の引退

 衆院選から半年後の2022年7月の参議院選挙でも、躍進は続きます。この頃の目標は、「打倒・立憲民主党」でした。自民党を倒す前段階として、野党第1党の奪取や全国への進出を狙っていきます。

 結果は立憲民主党を上回る比例票を獲得します。衆院選の勢いを参院選でもそのまま反映する形となりました。

 参院選後には松井一郎代表が引退し、次の代表には幹事長の馬場伸幸が選ばれました。以後、吉村洋文大阪府知事が共同代表となります。

統一地方選挙で躍進

 2023年4月の統一地方選挙でも大躍進します。400人程度の地方議員・首長が、この選挙の結果774人まで増えました。相変わらず絶好調です。

 とくに大阪府議会と大阪市議会では、維新だけで過半数の確保に成功しました。これまで大阪都構想に協力してもらうために公明党と仲良くしていましたが、これを機に公明党への配慮は取りやめることになります。具体的には、大阪の19選挙区のうち4つは公明党の現職がいることから候補を擁立していなかったところを、

大阪万博への批判

 ところが2023年中頃から、風向きが変わります。現在開催中の大阪・関西万博への批判が相次ぐようになりました。

 日本維新の会は、大阪での「身を切る改革」が看板政策でした。議員報酬を削減しつつ、”ムダ”な補助金も減らし、増税を経ずに財政を立て直すことに成功したのです。その維新が主導している大阪万博で税金を無駄遣いしていると批判されてしまい、維新にとっては痛手となります。これ以降、徐々に世論調査における政党支持率は低下していくことになり、立憲民主党にも再び逆転されてしまいます。

教育無償化を実現する会との合流

 2024年に入ると、前年に国民民主党を離党して結成された、教育無償化を実現する会との歩調を合わせるようになります。代表は前原誠司です。詳しくは立憲民主党や国民民主党の記事を参照してください。

 国会の統一会派結成から始まり、10月の衆院選を前にして、日本維新の会に合流しました。

2024衆院選、議席を減らす結果に…

 迎えた2024年10月の衆議院議員総選挙、結果を見てみましょう。

2024年 第50回衆議院議員総選挙(定数465名)

自由民主党 191議席
立憲民主党 148議席
日本維新の会 38議席
国民民主党 28議席
公明党 24議席
れいわ新選組 9議席
日本共産党 8議席
参政党 3議席
日本保守党 3議席

 前回が41議席だったため、3議席を減らします。「たったの3議席減」だと思えるかもしれませんが、立憲民主党や国民民主党の議席が大幅に増え、野党に思いっきり追い風が吹いている中での3議席減はかなりの打撃でした。全国の小選挙区に候補者を出しまくりましたが、結果は大惨敗でした。ただし大阪では絶好調で、初めて全小選挙区で勝利することができました。

 選挙の結果を受けて、馬場伸幸氏は代表から退くことになりました。

吉村洋文代表

 日本維新の会としては党の未来を揺るがす大ピンチです。党の立て直しが急務となりました。ここで代表に選ばれたのは、全国的に相当な人気がある吉村洋文大阪府知事です。そして、彼を支える共同代表になったのが前原誠司氏でした。そうです、ついさっき合流したばかりの前原氏が一気に共同代表に上り詰めたのです。

 時代は少数与党内閣。自民党と公明党だけでは過半数に届かず、野党1つ以上の賛成を取り付けないと予算も法案も通せません。

 そこに目をつけた、前原氏率いる維新の国会議員団は、高校教育無償化を条件に2025年度の本予算に賛成することにし、教育無償化という大きな公約を達成しました。国民民主党の「103万の壁」の引き上げとの政策競争で、ある意味勝ったことになります。

 また、野党による予備選も提唱するようになりました。実際に立憲民主党と協議し、和歌山と滋賀ではお互いの候補者を一本化することに成功しました。ただし、国民民主党を巻き込むことができず、現状2地域のみで止まっています。

参議院選挙へ

 退潮傾向の維新は、ここで巻き返すことができるのか、注目されます。

〜参議院情勢〜

現有議席:17
(改選5、非改選12)

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