基礎でない化学を学び始めると、気体の問題でつまずく人が続出します。
ですが、気体の問題で問われる内容は定型化されており、抑えるべきポイントを掴んでおけば解けないなんてことはありません。
覚える内容も少なく、理解していれば計算して答えを導けるので確実に自分のものにしておきましょう!
一番重要なもの
結論から言うと、次の理想気体の状態方程式を絶対に覚えてください。
PV=nRT Pは気体の圧力(Pa)、Vは気体の体積(L)、 nは物質量(mol)、Rは気体定数(R=8.314×103 Pa・L/mol・K )、Tは温度(K)
気体を習う際に始めにボイルの法則やシャルルの法則を習ったと思いますが、一番大切なのは上の理想気体の状態方程式(以下状態方程式と略)です。
状態方程式は化学を使わなくなるまで絶対に忘れないでください。
気体について
全ての物質は気体、液体、固体のいずれかの状態で存在しています。
その中でも気体は、それぞれの原子または分子が飛び回った状態をしています。
なので同じ物質量、すなわち同じ数の原子や分子でも周りの圧力や温度によって体積が変わってくるのです。
液体や固体に比べて、気体は周りの圧力や温度変化による体積変化が大きいため、気体を扱う上では、圧力や温度に気をつけなければなりません。
状態方程式が表すもの
まず、状態方程式と言われても初めはただの等式にしか見えないかもしれません。
ですが、状態方程式は気体の状態が圧力、体積、温度、物質量の4つの値によってただ一つに定まることを表しています。
つまり気体は圧力、体積、温度、物質量のうち3つが定まれば、残り一つの値を状態方程式を使って求めることができるのです。
※状態方程式に出てくる気体定数Rは8.314×103Pa・L/mol・Kの定数です。
比例定数(y=axのa)ですので、毎回8.314×103を代入してあげましょう。(問題始めに書いてあります。)
ここからはそれぞれの気体の構成要素について見ていきます。
整理しきれていない人は状態方程式さえ覚えてもらえば読み飛ばして構いません。
圧力について
圧力とは、気体が外に対して広がろうとする単位面積(1m2)あたりの力を指します。
1m2の面積に1Nの力が加わる圧力を1Paとして定義しています。
ここで状態方程式を圧力がわかりやすい形に変形して見ましょう。
P=nRT/V
物質量と温度は圧力に比例しています。
物質量が二倍になれば、原子や分子の数が二倍になるため気体はその分窮屈になって圧力が二倍になるのは当然です。
また温度も二倍になれば圧力も二倍になります。
ただし注意してほしいのは、状態方程式における温度とは絶対温度(ケルビン)です。300K(27℃)から600K(327℃)になったときに圧力が二倍になります。
25℃→50℃では圧力は二倍になりませんので注意しましょう。
※状態方程式を使う際に摂氏(℃)を使ってミスをする人がよくいます。必ず+273をして絶対温度に直すことを忘れないでください。27℃=300Kを覚えておくと便利です。
また、圧力は体積に反比例しています。
例えば、風船の体積を半分に押しつぶすと中の気体は窮屈になって圧力は二倍になりますね。
体積について
体積は気体の大きさを表しています。
ここで注意してほしいのが、高校化学においては体積の単位がLです。
1L=1000cm3=0.001m3と変換はできるようにしておきましょう。
ないとは思いますが、、気体定数Rが8.314 Pa・m3(J)/mol・Kと問題文で与えられた場合は体積は立方メートル(m3)を使うことになります。
大学入試では気体定数はR=8.314×103Pa・L/mol・Kがほとんどなので体積はLの値を使いましょう。
……余談ですが、体積の単位は本来m3が基本ですので、大学に入ると気体定数は8.314となり、Lはdm3(立方デシメートル)を使い、Lという曖昧な単位を使うことがなくなります。
話が長くなりましたが、体積について状態方程式を変形してみましょう。
V=nRT/P
圧力の場合と似ています。
体積は物質量と温度に比例して、圧力に反比例します。
圧力が一定であれば、物質量を倍したり温度を倍すれば体積も倍になりますし、逆に圧力が倍になれば体積は半分になりますね。
ここで、物質量と温度が一定のとき、すなわちnRTが定数のとき圧力と体積が反比例することをボイルの法則と言います。
ボイルの法則
PV=一定
このボイルの法則はロバート・ボイルが実験的に発見した法則です。
同じ温度と気体の量の風船を押し潰して体積を半分にすれば、圧力は二倍となって大気圧(外の圧力)より大きくなるため外に広がろうとしますし、逆に風船を引き伸ばして体積広げれば圧力が半分になって大気圧より小さくなるため大気圧に潰されて元の大きさに戻ろうとします。
これは直感的に納得がいくではないでしょうか。
そんなわけあるかい!と思った人は風船を潰してみてください。
温度について
温度はみなさんが日頃過ごしていて身近に感じるものだと思います。
高温や低温の違いは、原子や分子の熱運動の大小によるものです。
0K(0ケルビン)より大きい温度の場合、原子や分子は振動して動いています。
さらに温度が高くなっていくと原子や分子の熱運動は激しくなり、ゆくゆくは気体のように分子が飛び回るようになるのです。
(とそれっぽく説明していますが、実は温度って身近に存在するにも関わらず曖昧なものなんですよね。明確な定義がなく、理論上、上限もありません。そもそも熱いだとか冷たいというのは相対的な指標に過ぎないのです。温度の正体をよく知りたい人は大学に入ったあとで熱力学について学んで見ましょう!エントロピーの存在を知ると見る世界が変わりますよ。)
温度についても状態方程式を変形して見ましょう。
T=PV/nR
温度は圧力と体積に比例して、物質量に反比例します。
温度の正体が分かりにくいため、直感的に納得のいく部分が少ないですが、式から導出されるので温度は圧力と体積に比例して物質量に反比例するのです。
ここで重要なのは、温度と体積が比例の関係にあることです。
これはシャルルの法則と呼ばれています。
シャルルの法則
V=kT (kは比例定数。状態方程式よりk=nR/Pとわかる。)
シャルルは圧力一定(大気圧下)のもと、気体の温度を上げると体積が膨張し、温度と体積に比例の関係があることを実験的に見出しました。
まとめ
何度の言いますが、化学における気体の問題において一番重要なのは
理想気体の状態方程式 PV=nRTです。
気体の状態が圧力、体積、温度、物質量によって定まることを知っていれば何も怖くありません。
ほとんどの気体の問題が、上のうち3つがわかっていて残り一つを状態方程式を使って求めるパターンです。
もし二つしかわかっていなくても、状況が二つあれば状態方程式の連立方程式を解けばよいだけです。
あとは演習問題をひたすら解きましょう!頑張ってください!
ちなみにPV=nRTは理想気体でのみ成り立つ方程式です。
実際に存在する気体のは原子や分子同士に分子間力が働いたり、原子や分子自体にも体積が存在しますから、PV=nRTは成り立ちません。注意しましょう!
追記:今回の記事ではとにかく状態方程式を覚えてもらいたくて真っ先に状態方程式を提示しています。ここで、本来であれば化学も理系の学問であるので説明に論理性を保たなければなりません。状態方程式が成立するのは、実験的にボイルの法則とシャルルの法則が導かれ、この二つを組み合わせたボイルシャルルの法則から確かめられることです。化学の問題を解く上ではとにかく状態方程式が大切であるので分かりやすさの便宜上あえて逆から説明しています。
私も化学を学ぶ上で、こういうものだから覚えなさいというやり方はあまり好きではありません。自然科学に対する物事の現象には必ず根拠や理屈が存在します。化学も突き詰めれば実験結果に対して必ずそのような結果になった理由が存在します。しかし、高校化学ではそれを説明できるまでの十分な知見がまだ整っていないため、結果としてこういうものだから覚えなさいと言わざるを得ないのが現状です。高校生の方にとっては疑問が残る点はあると思いますが、どうしても理由を突き詰めたいという人は大学の理学部へ行って学びを深めてください。ここまで記事を読んで納得してくれた方であれば、理屈を追求できる良い探求者になれるはずです。長い文章を読んでいただきありがとうございました。
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