分離と精製の方法について
化学では自然界から取り出した天然物を分離したり精製することで目的とする化合物や試薬を得ています。
なので化学を学ぶ上で分離と精製の操作は基本的な操作であり、実験をする際には必ず扱う操作です。
もちろん問題でもこれらの分離と精製の方法は頻出ですので、それぞれの特徴と原理を抑えておきましょう!
ろ過
分離といったら、やはりろ過ですね。
実験をしたことがある人ならば上のような器具には見覚えがあるはずです。
沈澱などの固体を含む溶液をろ紙に流すことで溶けなかったものがろ紙に残り、溶液は下のビーカーに溜まります。
注意すべきポイントは3つ。
①溶液をこぼさないようにガラス棒を使って漏斗に入れる。
②三角漏斗の先はビーカーの内壁につける。(これは液を途絶えさせずにろ過の速度を高めるため)
③溢れないように漏斗の8分目あたりまで溶液を入れる。
また、ろ紙は通常四つ折りにして使いますが、表面積を増やしてろ過の速度を上げるためにひだ折りろ紙を使うこともあります。
上の図は吸引ろ過です。
水を流すことで容器内が減圧となりろ過の速度が速くなります。
イメージとしては漏斗を吸って吸って無理やりろ過を進めている感じです。
(図のように水道の水を流して吸引するのですが、水もったいないなといつも思います。)
蒸留
沸点の違いを利用して溶液を分離するのが蒸留です。
上の図では丸底フラスコを加熱することで沸点が低い方の物質が先に気体となり、リービッヒ冷却器で冷やされてビーカーに溜まります。
注意すべきポイントは、加熱する溶液に含まれる化合物に十分な沸点の差がないと分離できないところです。
また、温度計は沸点を測定したいので枝付きフラスコの上部につけ(溶液につけない)、リービッヒ冷却器の水は下から上に流れている(逆の場合は十分に冷却水が管内を満たせない)ことに注意しましょう。
ちなみに蒸留と似たような名前で分留(分別蒸留)があります。
分留は二種類以上の液体の混合物から沸点の違いを利用して分離する操作です。
原油からガソリンや灯油を精製するときの操作が分留で、蒸留の一種ですが混合しないように気をつけましょう。
再結晶法
温度による溶解度の差を利用したものが再結晶です。
まずは溶液を加熱して化合物を全て溶かし、一度高温でろ過をすることで不純物を取り除いて、その後溶液を冷却することで溶解度の低いものが純粋な結晶として析出します。
結晶が析出したら、先に述べたろ過を行うことで結晶の化合物を精製することができますね。
再結晶を行うためには温度によって溶解度が大きくことなるものでないといけません。
これは溶解度曲線の傾きが急な物質とも言えますね。
抽出
分液ろうとを用いて、油層と水層から一方を取り出す操作が抽出です。
この分離は主に有機物を分離する際に使うので、化学の有機分野を学ぶまではいまいちよくわからないかもしれません。
塩などのイオン性の結晶は水によく溶けますが油などの有機溶媒には溶けません。
一方でほとんどの有機化合物は水には溶けず、有機溶媒に溶けます。
この違いを利用して、有機物と塩を分液ろうと内の水層と油層に分離して一方を排出して分離するのです。
ただし抽出で注意すべきところは、溶液を排出する際に境界面まで排出してはいけないことです。
境界面ぴったりで分離することは構造上難しいので、排出した液が一方の層のみになるように注意しましょう。
昇華
ヨウ素やナフタレンなどの昇華性をもつものは上のような器具で精製することができます。
下から加熱することで固体のヨウ素が気体となり、上部の丸底フラスコで冷却されることでヨウ素の単体がフラスコの底に析出します。
ただし、あくまでヨウ素やナフタレンのような昇華性を持つ化合物のみしか精製できない点については気をつけましょう。
クロマトグラフィー
これは私が実際に実験で使用したペーパークロマトグラフィーです。
クロマトグラフィーにも種類がありますが、共通するのは化合物の吸着の違いを利用して化合物を分離することです。
化合物の種類によって、吸着しやすいものは溶媒によって流れにくいのであまり流動せず、吸着しにくいものは溶媒と共に流れるので遠くまで運ばれます。
写真は下から上に溶媒が移動したものですが、吸着力の強い化合物は下にとどまり、吸着力の弱いものは上まで運ばれています。
大学で化学系や生物系を選択すると実験で使うことは多いのですが、高校生や中学生には馴染みないものかもしれません、、
化合物の種類によって帯状に分かれるようなイメージを持ってくれれば大丈夫です。
まとめ
ここまでいろいろな分離と精製方法を述べてきましたが最後にまとめておきます。
ろ過……溶液に溶けていない固体や沈澱をろ紙を通して分離する。
蒸留……沸点の低いものを温度を確認して蒸発させ冷やすことで分離する。
分留……二種類以上の混合物を沸点の違いを利用して分離する。
再結晶法……温度による溶解度の差を利用して、溶液を冷却することで結晶を析出させる。
抽出……目的とする化合物を溶かす異なる溶媒に混合物を溶かして分離する。
昇華……昇華性をもつ物質を気体から固体に変化させることで精製する。
クロマトグラフィー……化合物の吸着のしやすさの違いを利用して分離する。
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