無機化学の解説として、族ごとに分けて解説記事を書いています。今回は、16族の窒素・リンについて解説していきます。
15族元素とは
15族元素については、N(窒素)・P(リン)・As(アスタチン)・Sb(アンチモン)・Bi(ビスマス)になります。今回は、この中でも入試頻出の窒素とリンについて解説していきます。
窒素
窒素の単体
窒素の単体N2は、空気中に最も多く含まれる気体です。実に、空気の80%は窒素になります。窒素は安定しており、ほとんど反応性を示しません。
また窒素の温度を極端に下げて凝縮させた液体窒素については、医療現場で使われたりしますね。
窒素酸化物
窒素酸化物NOxは総称してノックスと呼ばれています。大気汚染の原因物質として有名ですね。
代表的な窒素酸化物には、一酸化窒素NOと二酸化窒素NO2があります。一酸化窒素NOについては無色無臭で、二酸化窒素NO2は赤褐色の気体です。一酸化窒素NOは、空気に触れるとすぐに酸素と反応して二酸化窒素NO2になります。また、二酸化窒素NO2は、常温では無色のN2O4と平衡です。平衡の計算問題では、よくこれが出てきます。
アンモニア
窒素化合物の代表といえば、やっぱりアンモニアNH3ですよね。皆さんのイメージは”くさい”ことでしょう。その通り、刺激臭がします。
アンモニアの反応について簡単に解説しておきましょう。まずはHClに近づけると白煙が生じます。白煙の正体は塩化アンモニウムNH4Clですね。また、アンモニアを水に溶かすとNH4+イオンに”電離”し、弱酸性の水溶液となります。
ハーバー・ボッシュ法
鉄を触媒としつつ高温高圧下で、窒素と酸素を反応させるとアンモニアができます。まあアンモニアの構成元素がHとNなのでわかりやすいとは思います。この工業的製法のことを、ハーバー・ボッシュ法と言います。
硝酸
硝酸HNO3についてもここで解説しておきましょう。強酸の1つであることは知っていると思います。酸化作用を持っていますね。濃硝酸と希硝酸で半反応式が違うので、そこは注意してください。半反応式については以下の記事を参照してください。
硝酸は光で反応してしまうので褐色びんで保存するという知識も、たまに問われます。
オストワルト法
NH3を原料として、いろんな反応を経て硝酸を作る製法のことをオストワルト法と言います。冒頭では白金を触媒として用います。詳しい解説まですると時間がかかるので、それはまた別の機会に。
リン
リンの単体・同素体
リンには同素体があります。黄リンと赤リンです。黄リンについては、淡黄色で毒性があり、CS2には溶けるのが特徴です。黄リンは空気中で自然発火してしまうという危ない性質もあります。赤リンについては、赤褐色で毒性がなく、マッチの側面に使われています。まあマッチに毒性があっても自然発火しても大変なので、そこからイメージを繋げて「黄リン=有毒かつ自然発火 赤リン=無毒」が出てきてくれれば良いと思います。
リン酸
リンといえばリン酸ですから、これについては関連物質も含めて詳しく解説していきましょう。
まずは黄リンを燃焼することで生成する十酸化四リンP4O10です。これは潮解性(空気中においておくと、吸湿して湿ってしまう性質)があるので乾燥剤として使われます。ただし酸性の物質なので塩基性の物質の乾燥には使えませんよ。
十酸化四リンに水を加えて加熱するとできるのがリン酸になります。リン酸は「弱酸にしては強いけど、強酸にしては弱い」という中途半端な酸性度なんですね。このことから、よく中酸であると定義されます。
肥料について
「窒素」や「リン」と聞くと、肥料もセットで思い浮かべる方も多いと思います。実際に肥料についても、地味に良く聞かれます。これについては以下の記事に詳しい解説があるので、こちらをご覧ください。
まとめ
今回は窒素とリンについて解説しました。どちらも入試頻出ですので、必ずマスターしてください。
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