さて今回は、ローマ文化を見ていきましょう。大好評をいただき、ありがたいですが、記事を出す頻度が少なくて申し訳ないです。7月以降は、月に2回は出せるように努力します。ということで、古代西アジア・ヨーロッパの文化は今回でひとまず完結しますので、頑張っていきましょう。イスラーム文化・中世ヨーロッパ文化は中国文化が終わったあとに触れます。
時代背景
この時代の状況を見ていきましょう。アレクサンドロス大王の東方遠征が終わった後、ディアドゴイ戦争を通してヘレニズム世界はバラバラになってしまいました。
その一方で、イタリア半島では確実にローマの力が増大していきました。やがて、バクトリア王国はトハラor大月氏によって滅亡し、アム川周辺ではイラン系のクシャーナ朝などがおり、ギリシア世界とは関係があまりなくなってしまいました。
セレウコス朝から自立したパルティアについては、イラン系王朝であり、続くササン朝とともに、独自の文化を持っていました。
ギリシア世界を継続したのは、アンティゴノス朝マケドニア・セレウコス朝シリア・プトレマイオス朝エジプトがヘレニズム3国、その他にポントゥス王国・ペルガモン王国などの小さい王国もありました。
そのギリシア系王朝を次々と滅ぼしたのが、共和政時代のローマです。マケドニアを滅ぼし、セレウコス朝も滅ぼし、B.C.30年にプトレマイオス朝を滅ぼして地中海世界を統一しました。そして、オクタウィアヌスがアウグストゥスに任命され、ローマ帝国がめでたく始まっていきます。
ローマ文化の概要
ギリシアは征服されましたが、これで終わったかと言ったらそんなことはありません。ギリシア・ヘレニズム文化の影響を受けているというだけでなく、ギリシア人自身の活躍が見られるのがローマ文化の特徴です。
「征服されたギリシアは猛きローマを征服した」という言葉は知っていますか? ギリシア人は政治的には征服されたが、文化的には征服しちゃったってことです。すごいでしょ! ってことで今までの文化も重要になってきますので、忘れている人は必ず復習してください!
ローマ文化解説については、ギリシア文化・ヘレニズム文化をある程度理解し、覚えている前提で進めていきます。
もう一つ、ローマ文化の特徴があります。何でもかんでもギリシア人の模倣をしたわけではないですよ。もしそうなら、”ローマ文化”っていう言葉が存在しないもん(笑)
ローマの文化は、建築と法律でローマ人の能力を発揮した。
ローマ人は様々な文化でギリシア人に劣ってしまいますが、建築と法律においてはローマ人の実力を発揮します。2つまとめて「実用的な文化」とでも、まとめておきましょう。
※以下から解説が始まります。それぞれの項目に出てくる人物のうち、ギリシア人はアンダーラインを引いて記載します。
哲学
ストア派
哲学では、ストア派が盛んでした。皆さん、ストア派を始めたのは誰ですか? ゼノンですね。ストイックの語源っていう例の派閥です。これはヘレニズム文化でやってますので、しっかり復習してください。「禁欲」が盛んだったローマ時代の哲学者を見ていきましょう。
セネカ・・・ネロ帝の師、『幸福論』
エピクテトス・・・ギリシア人で奴隷出身
マルクス=アウレリウス=アントニヌス・・・哲人皇帝、『自省録』
ストア派は3人暗記してください。ちなみにセネカに関連して、ネロ帝っていつくらいの人ですか? これは紀元後すぐの皇帝です。もっと分かりやすく言うなら、ペテロ・パウロの弾圧を行った人です。キリストが生まれたのが紀元元年頃ですので、その弟子が活躍した時代をイメージしていただければ、分かりやすいでしょう。
エピクロス派・新プラトン主義
ストア派が主流でしたが、もちろん他派の人もいますよ。エピクロス派と新プラトン主義で一人ずつ押さえましょう
ルクレティウス・・・エピクロス派
プロティノス・・・新プラトン主義
暗記優先順位は低いかと思いますが、この2人を押さえておけば間違いないでしょう。エピクロス派については、前回解説したのでそっちを見てください。
新プラトン主義は初登場なので簡単に説明します。プラトンの重要な概念にイデア論があったと思います。それを継承しつつ、本家プラトンとは離れた思想を持つ派です。”新プラトン主義”という名前はもっと後の時代に作られたので、プロティノス的には、本家プラトンの正統だと思ってるんでしょうけど、結果的に別のものになってしまったんですね。
文学
さてと、文学について見ていきましょう。文学の全盛期はアウグストゥス時代です。この時代は、ラテン文学の黄金期と言われています。ところが、その前に1人だけ覚えておくべき人がいます。
キケロ・・・ローマ最大の文章家、『友情論』『国家論』
キケロは、紀元前1世紀頃の人です。ラテン文学の黄金期が始まる前に亡くなってしまいますが、ラテン文学の先駆者って感じですね。この人は、ただの文章家ではありません。政治家であり、雄弁家です。この人の政治的主張は共和政です。つまり、独裁には反対なんですよ。この時代に独裁政権を持っていたカエサルに対抗します。ところが、カエサルの死後オクタウィアヌスを支持するも第2回三頭政治の成立で失脚し、後に暗殺されてしまいます。
では続いて、ラテン文学の黄金期を見ていきましょう。
ウェルギリウス・・・『アエネイス』
ホラティウス・・・『叙情詩集』
オウィディウス・・・『恋の技法』『転身譜』
絶対暗記は、人物名と『アエネイス』です。残りの作品は、結構マニアックなので無理はしないでください。
ウェルギリウスについては、アウグストゥスと交流があったようです。『アエネイス』はローマ建国叙事詩なんですが、かなり肯定的に書かれています。
逆にオウィディウスは風紀を乱したとして、アウグストゥスによって追放されています。ホラティウスの詩の技法については、後の文化に大きな影響を与えています。
歴史・地理
歴史と地理を一気に見ていきましょう。
ポリビオス・・・『歴史』
カエサル・・・『ガリア戦記』
ストラボン・・・『地理誌』
リウィウス・・・『ローマ建国史』
プルタルコス・・・『対比列伝』
タキトゥス・・・『ゲルマニア』
ここでは、作者と作品を1対1で暗記することが重要です。その上で、少し解説していきます。
まず、カエサルの『ガリア戦記』とタキトゥスの『ゲルマニア』は、ゲルマン人の社会を知る上で重要な史料になります。両作品ともタイトルがゲルマン人っぽいから分かりやすいでしょ? 『ガリア戦記』はカエサルのガリア遠征関連ですね。
ポリビオスの『歴史』は、政体循環史観で記述されています。世の中の政治は、王政→貴族政→僭主政→民主政→衆愚政→王政っていう具合で延々と繰り返されるという法則です。これ見たことあるでしょ? そうです、ギリシアの政治変遷ですよね。これを言い出すってことは、ポリビオスはギリシア人ですよね。
ちなみに、『歴史』という著書がいっぱい出てくるので整理しておきましょう。全員ギリシア人です。
~『歴史』の著書を書いた人たち~
ヘロドトス・・・ペルシア戦争を記述
トゥキディデス・・・ペロポネソス戦争を記述
ポリビオス・・・ローマ建国史を記述
リウィウスは、アウグストゥスの厚遇を受けます。ただし、ポリビオスは共和政派だったようですよ。諸説ありですが…
さいごにギリシア人ですが、ここでは3人登場します。ギリシア人は歴史学に強いのかね~、ヘロドトスとかもいるしさ。では、ギリシア人の見分け方を見ていきましょう。『対比列伝』って何の対比ですか? これは、ギリシアとローマの対比です。ギリシアに住みつつ、ローマに支配されたからこそ書けたのではと考えられますね。(まあ実際は、歴史書を見ればローマ人でも書けたと思いますけど、今回は暗記においてイメージをつかむためにそうやって覚えてください)
ポリビオスはさっき述べた通り、分かりやすいでしょ。ストラボンがギリシア人ってのは分かりにくいよね。これは覚えよう… ちなみに、「『地理誌』を書いたってことは、ギリシア人は地理学もすごいの?」って思うでしょうけど、『地理誌』って地理書兼歴史書です。ギリシア人は歴史学に強いって覚えておきましょう。
自然科学
とりあえず、3人覚えましょう。
プトレマイオス・・・『天文学大全』
ガレノス・・・医者
プリニウス・・・『博物誌』
プトレマイオスで重要な事項があります。天動説を唱えたことです。この世界は地球を中心に、太陽や月が回っているという考え方です。この説が、中世以降のヨーロッパで主流の考え方になり、それに異を唱えるようになったのがルネサンスですね。その話は、また別の機会にしましょう! ちなみに、ヘレニズム文化で登場したアリスタルコスは地動説を主張しています。
~天動説・地動説の変遷~
地動説 〈ヘレニズム〉アリスタルコス
⇓
天動説 〈ローマ〉プトレマイオス
⇓
地動説 〈ルネサンス〉コペルニクス・ガリレイなど
⇓
1992年 ローマ教皇庁が天動説を放棄
この流れを抑えてください。プトレマイオス期以降について、カトリック教会は徹底的に天動説の立場を取っていきました。カトリックが天動説を放棄したのは、1992年のことです。ルネサンス期の詳しい話は、また別の機会にお話しします。
プリニウスについては、『博物誌』という百科事典を著します。ガレノスは、マルクス=アウレリウス=アントニヌス帝の侍医であったと覚えておきましょう。
ちなみに、プトレマイオスとガレノスはギリシア人です。自然科学の分野でもギリシア人の活躍があるんですね!
まとめ
ギリシア・ヘレニズム・ローマで、一旦完結します。ここで繋がってくると、理解しやすく覚えやすくなると思います。
次回はインドの文化です。
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