多くの化合物は、原子と原子が結合してできています。
この結合にも種類があり、結合の種類によって性質が大きく異なるので、分類して把握できるようにならなければなりません。
今回は化学結合についてそれぞれの違いと特徴を理解しましょう。
はじめに
まず、どうして原子同士は結合をするのでしょうか?
教科書等ではこのことにあまり触れずにいきなり結合の種類について説明しているので、この質問に答えられる人は案外少ないと思います。
答えは、、、結合した方が原子のエネルギーが下がり安定になるからです。
原子がお互い別々にいる場合よりも、一緒にいる方が安定な場合に結合します。
そして原子同士の種類の違いによって異なる結合方法があるのです。
共有結合
原子は最外殻に電子が全て満たされる状態(主に8個)が安定です。
これは18族の貴ガスの原子が該当しますが、ほとんどの原子は最外殻が満たされていません。
そこで、二つ以上の原子が足りない分の電子を共有して最外殻を満たしたものが分子であり、この場合の原子と原子の結合を共有結合と言います。
例えば、17族のハロゲンの原子は最外殻に電子があと一つあれば安定となるため、上図のように二つの原子同士で二つの電子を共有することで分子となり安定になります。
このときに大切なのは、原子の周りの電子が8個になっていることです。
原子は安定な8個の電子を持つ状態をとろうとする法則をオクテット則と言います。
オクテット則……原子が最外殻電子が8つのときに安定となり、電子8つの状態をとろうとする法則。
(広く言えば、安定な電子配置である18族の貴ガスの電子配置に近づこうとする法則とも言える。)
共有結合は電子を点で表した上のような電子式(ルイス構造)で書かれることがあります。
炭素の周りに8個の電子があり、ちゃんとオクテット則を満たしていますね。
(水素の周りには8個ありませんが、最外殻であるK殻に2つの電子があるため安定です。)
配位結合
共有結合の仲間に配位結合というものがあります。
アンモニアと水素イオンが結合することでアンモニウムイオンとなり、水素イオンの周りの電子が2個となるため、お互いが別々でいるよりも安定になります。
このとき、アンモニアの電子二つ(非共有電子対)を水素イオンに与えているので、電子を共有(お互い出し合う)とは言えません。
そのため、このように一方の原子、または分子がもう一方に電子対を供与して結合することを配位結合と言います。
ただし、注意してほしいのは配位結合は共有結合の仲間であり、上図のアンモニウムイオンの水素原子に区別はありません。
イオン結合
陽イオンと陰イオン同士の結合をイオン結合と言います。
例えば、上図で示した塩化ナトリウム(食塩)の場合、ナトリウムと塩素は電子を一つ移動してナトリウムイオンと塩化物イオンの状態でいる方が安定です。
このとき、ナトリウムイオンは陽イオンであり、塩化物イオンは陰イオンであるためお互いに静電引力(クーロン力)が働くためイオン同士で引き合います。
静電引力(クーロン力)とは……正電荷と負電荷に生じる引力のことです。
これがイオン結合であり、必ず陽イオンと陰イオン同士の結合であることに注意しましょう。
ちなみにイオン結合を持つ化合物は結晶構造をとります。
そのため分子のような明確な一つあたりの単位がなく、陽イオンと陰イオンが交互に配置された構造をしています。
なのでイオン結合をもつ物質は分子量ではなく、一つの原子の組に相当する式量が使われます。
また、静電引力は非常に強いため陽イオンと陰イオンを引き離すのは容易ではありません。
そのためにイオン結合をもつ物質は高融点、高沸点です。
金属結合
金属の中をのぞいてみると、上図のように金属元素の陽イオン(M+)の間を自由電子が動き回っている構造をしています。
金属元素は原子番号が大きいため、最外殻電子は陽子との距離が遠く、容易に殻から飛び出してしまうので金属元素は陽イオンになりやすいのです。
そして飛び出た電子が他の金属元素の陽イオンの間を飛び回ることで自由電子となり、金属原子を引きつけているのです。
これが金属結合であり、イオン結合と同様に原子と原子が静電引力によって引きつけられているため高融点、高沸点となっています。
また金属結合の特徴としては自由電子があるおかげで電気伝導性をもつことや、高い熱伝導性を持つこと、上図のような構造をしているので引き伸ばして変形することができるので展性、延性を持つことがあります。
ここであと一つ、金属光沢をもつ特徴があります。
どうして金属が光沢を持つかを説明するためには、光が粒子であり波でもあることを理解する必要があるので高校化学では知っておく必要はありません。
それでもどうしても理由を知りたいという君は、現象の原理を追求する大学の理学部へ入りましょう!
まとめ
最後にそれぞれの結合についてまとめておきます。
共有結合……二つ以上の原子または分子が電子を互いに共有することで分子となる結合。
主に周期表真ん中の上の方の元素(炭素、窒素、酸素、水素など)が共有結合を作る。
配位結合……共有結合の仲間で、一方の原子または分子がもう一方に電子対(二つの電子)を供与することで作られる結合。
イオン結合……陽イオンと陰イオン同士のよる静電引力による結合。
主に周期表両端の元素同士(貴ガスを除く、アルカリ金属元素、ハロゲン元素など)がイオン結合を作る。
金属結合……元素の陽イオンと自由電子の静電引力による結合。
主に陽イオンになりやすい(水素を除く)元素、すなわち金属元素が金属結合を作る。
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